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産経ネットメディアの記事盗用、問題の本質は「デスク業務の業務委託化」じゃない

イメージ画像 のらニュース
ブログ本文を元に、DALL-E3にて生成

2025年12月3日水曜日のニュースです。さて、今日のニュースは昨日発表された内容についてご紹介します。

5つのニュースサイトから「盗用」を報告

産経新聞社のネットメディア「emogram(エモグラム)」が、他社の記事を盗用した例が5つ確認されたとして、謝罪と削除の報告を行いました。

【お詫び】エモグラムでの記事盗用について – emogram[エモグラム]
産経新聞社が運営するインターネット媒体「emogram(エモグラム)」で2日までに、他社の記事を盗用した事例が5件あることが判明しました。知的財産権を尊重すべき新聞社のネット媒体であるにもかかわらず、...

盗作元になったのは「まいどなニュース(神戸新聞社)」や、「読売新聞オンライン」、「J-CASTニュース」、「千葉日報オンライン」、そして「スポニチアネックス(スポーツニッポン)」などの5つの媒体です。

これらの媒体に掲載されている記事をコピーし、末尾のところを少し変えることで、まるで自分たちの記事のように掲載していたという形です。この事態がなぜ起きたのかについても説明がなされています。

原稿チェックをする「デスク」という立場

「デスク」という、メディア用語で広く知られている言葉について改めてご紹介します。メディアには記者やライターといった書く人がいるほか、その原稿をチェックする人が必要です。

チェックを行うのは、編集長や副編集長クラスもいますが、それら原稿をチェックする人たちのことをデスクと呼ぶのです。エモグラムの場合も、全ての記事をデスクがチェックしていましたが、一部のデスク業務を業務委託の編集者に任せていたことで、当該の記事5本はこの編集者が担当し、盗用に気付かなかったということです。

「当該の記事を含む一部の記事について社員が関与しないまま出稿されていた体制にも問題があったと深刻に受け止めています」とのことですが、これに対してどう思うのかが重要です。

私がまず考えたいのは、「デスクチェックを業務委託の編集者に任せたために、社員が関与していなかったことが、一番の問題なのか」という問いです。

問題は「外注すること」ではなく、「誰に外注するか」だ

実際、私は産経からは業務委託を受けていませんが、ネットメディアの編集業務を請け負っているフリーランスです。その立場からすると、「外注が原因」と認識されてしまうのは極めて心外です。

もちろん、現在業務委託している会社においても、最終的な責任は社員や法人が担うことになります。最終的には損害賠償など、何らかの制裁が加わる場合、その個人事業主としての私とともに発注先クライアントである会社も責任を負う可能性があります。

私もかつては、会社員として媒体の編集長やデスクを経験しました。当時の職場ではデスク業務を内製していましたが、外注する気持ちも理解できます。

会社員とフリーランスの立場、両方から考慮すると、たとえ外注するにしても「業務委託先」の実績が重要であることは言うまでもありません。根本的に反社会的勢力に関与していないかどうか、技術面や権利関係のモラルがしっかりしているかどうかも含めて、業務委託先は決めるべきです。

考えるべきは「チェックの手順」や「違和感」だ

私自身は、会社員の経験から、これらの盗作を見抜くセンサーはある方だと自負しています。今回削除した5本は、いずれも最近話題になっているインターネットのバズる話が中心になっています。各社報道を比較すれば、「これ、ちょっとおかしくないか」と気づくはずなのです。

盗作が1本や2本ではなく、5本もあったということは、それなりのボリュームの原稿が、日々作成されていたことが想定されます。同じ編集者がチェックを重ねても、違和感を持たずに、幾度となく見過ごされてきたチェックの「手順」に、大きな問題があるでしょう。

ただ産経新聞社の発表を見る限りでは、「外注していたこと自体が問題だった」と思わせられる書き方がされています。私は会社員としてインターネットメディアで職責を担った後、今はフリーランスとして活動していますが、あまりこの言い回しには、良い印象を持っていません。

自社ブランドを大切にしているか

編集部門を外注していたことでチェック体制が甘くなっていた事例は、数ヶ月前に毎日新聞が独自のインターネットのバズ情報を編集プロダクションに丸投げし、ある芸能人のアカウントをなりすましだと報じてしまったことがありました。

毎日新聞“こたつ記事”誤報に波紋 竹中平蔵氏「消費税や法律の恩恵を受けるメディアがPV稼ぎ=大衆に媚びるのはジャーナリズム失格だ」 | 経済・IT | ABEMA TIMES | アベマタイムズ
全国紙の「毎日新聞」が、突如記事を削除した。人気アイドルグループのSNSアカウントの発信をもとに記事を書いたが、そのアカウントが「なりすまし」だと判明し、誤報のお詫びを掲載することになったのだ。ネットでは「裏取りしないと全国紙の信頼が落ちる...

その際、外注の是非が語られましたが、自社ブランドを商売に利用する以上は、媒体としてしっかりした方針を持ち、倫理的な部分を守るということが重要です。

自社のブランドを貸し出す訳ですから、その相手が業務委託であっても責任を持つべきです。「外注だと安く済むから」といった発想になりがちですが、ありがたいことに私の取引先は、「この人だからこそ頼みたい」とプラスしてくれる人として、見てもらっていると思います。

安価な利益を求めると、今後の競争には勝てないのではないかと感じています。この問題提起は、今回の件を見て私が感じたことの一部です。

「AIの著作権侵害」を問題視する前に…

今回の件について、私は利害関係者ではありませんが、5つの媒体の中に私がかつて所属したことのあるJ-CASTニュースが含まれていることに、時代の変化を感じます。

「他社からパクられるほど、独自性のあるメディアだ」と誇れるうれしさもありますが、盗作は決して許されない行為であり、古巣を含めた各社が、しっかりした対応を取ることを望みます。

また最近、AIが新聞記事を無断使用していると、このところ新聞各社や日本新聞協会が文句を言っていますが、足元の実情を見ると、矛盾していると感じます。

産経新聞社が米生成AI事業者に抗議 記事の「無断利用」「異なる表示」 共同と毎日も
生成人工知能(AI)を活用した検索サービスで、産経新聞社が所有する記事を無断利用し、著作権を侵害したなどとして、産経新聞社は1日、米新興企業パープレキシティに…

産経や毎日の事例でも、いま紹介したような問題があったわけですから、棚に上げているようだと、新聞業界がデジタルを軽視している印象を与えてしまいます。

以上、本日は様々に考えさせられる出来事でした。最後までお付き合いありがとうございました。また次回お会いしましょう。

(以上はコラムニスト・城戸譲が、ポッドキャスト「のらニュース」などで話した内容を、AI文字起こし・要約によってブログ記事化したものです。公開時点で最新情報ではない可能性があるため、その点はご了承ください)
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