2025年6月16日月曜日、のらニュースでございます。
政治、炎上、そしてメディアへの興味
昨日分は、お休みと言いますか、ちょっと気楽な感じでやっておりましたけれども。今日は、ちょっと毛色を変えた内容をご紹介しようかなと思っております。
政治やネットの炎上系の話題というのは、私が興味を持っているところなんですけれども、それとプラスして私が興味を持っているのがメディア関係なんですね。
ネットメディアと言えども、メディア業界の片隅に、10年以上身を置いて参りました。新聞やテレビといった従来型のもの、最近では「オールドメディア」なんて言い方が増えていますが、そういった媒体にもちゃんと目配りをしていくというところが、趣味としても、仕事としてもどちらでも、興味関心を抱いているものでございます。
朝日新聞「労働環境の維持・改善を図っていく」
そしてですね、既存のマスメディアでここ最近注目されている動きというものをご紹介しようかなと思います。
まずは、最初に発表したのが朝日新聞なんですが、「土曜日の夕刊 8月から休刊します」という発表を6月3日の時点でしていました。

もうこれ2週間ぐらい前の話になってしまうんですけれども、東京と大阪本社で発行している土曜日の夕刊を休刊するということで、平日の夕刊は引き続き発行するわけなんですが、説明文をご紹介いたしましょう。
「人手不足が深刻化するとともに、休日の確保や労働時間の適正化といった働き方改革が社会的要請となっています。ASA(朝日新聞販売所)の労働環境の維持・改善を図っていくため、土曜日の新聞のお届けは朝刊のみとさせていただくこととしました」
で、土曜の夕刊に載っていたものは平日の夕刊に載るようになりますよなんてことが書いてあり、月額料金は据え置きとさせていただきますということが記されています。つまり、夕刊はなくなるけれども価格を値下げしないということですね。うん。
毎日新聞「労働環境の維持・改善を図るための措置」
これが6月3日に発表されたわけなんですが、その後、ここ数日で各社が追随しています。毎日新聞は12日に、8月2日から土曜日の夕刊を休刊すると発表しました。

「新聞販売店で働く従業員や、新聞の配送を担うトラックドライバーの不足が深刻化しており、労働環境の維持・改善を図るための措置として、土曜日の配達は朝刊のみとさせていただきます」
朝日と同じことが書いてあります。こちらも、月額料金は誠に恐縮ですが据え置きとさせていただきますとなっています。
産経新聞も労働環境を理由に挙げた
これが12日ということで、朝日新聞の数日後に発表されたわけなんですが、次に14日に産経新聞も発表しました。
これについては、産経新聞だけが公式の発表文がちょっと見当たらないので、時事通信の記事を見ていますが、これも販売店従業員の休日確保や、労働時間調整などが目的で月額料金は据え置きという風になっています。

夕刊が発行されているのは大阪本社管内の2府4県が中心ということですので、産経新聞は元々大阪が地盤ですが、発行が及ぶエリアは、元々新聞夕刊の配信が少なかったということがあるんでしょうね(※補足:東京本社版は2002年時点で夕刊廃止済み)。
東京新聞「輸送体制の維持が困難になった」
そして、同じく14日に東京新聞も、土曜の夕刊を休刊する方向性が示されています。

一応、各社とも「休止」「休刊」という表現を使っているところは言っておく必要がありますね。大体、メディアの世界で「休刊」と言うと、ほぼ「廃刊」とイコールですが、あくまでも「休刊」という表現を各社がしているわけです。
東京新聞の説明も、「新聞の製作、輸送、配達を取り巻く環境や働き方が大きく変化する中で、土曜日夕刊の輸送体制の維持が困難になったため」ですと。
これも朝刊と夕刊のセット価格は従来通り月々3980円で、「都内最安値を堅持します」とアピールしていますね。一番安いから文句を言わないでくださいということなんでしょうか。
「報道機関の使命」とは何なのだろう
東京新聞のこの発表文で、他の数社と比べて違うところが一番最後の部分です。
「今後も新聞の戸別配達網を維持し、報道機関の使命を果たしていきますので、引き続きご愛読いただきますようお願い申し上げます」
新聞が紙ベースからデジタルに移行しつつあり、紙の新聞が衰退していくと、「新聞の戸別配達がどれだけ維持できるか」は死活問題になるわけですね。
今回は大都市圏も含めて土曜の夕刊が休刊という形ですけれども、地域によってはその新聞発行そのものがなくなるところも出てきています。
場合によっては郵送で対応するなんてこともあるわけですが、そうなると新聞配達員さんが直接配るよりスピードは遅くなるので、数日後に「最新記事」が届くなんてことも考えられるわけです。
本当に新聞販売店を守ろうとしてきたのか
情報の伝達という意味において、どこまでメディアの使命を果たしているのかなと感じるわけなのですが、やはり「新聞社としての体制」に限界があるということだと思います。
いろいろな理由をつけていますが、遅かれ早かれ配達網の縮小は予想できていたことです。今回は新聞販売店を理由にしていますが、本当に販売店を守る気があるのか、というのは私は極めて疑問です。
新聞の凋落傾向はかなり前から言われていて、「電子版」を公式で出すものもあれば、Yahoo!ニュースやLINE NEWSに配信するタイプもあるわけですが、ネット主体の収益モデルになることによって、既存の販売店のビジネスモデルが崩れてしまうわけです。
その販売網を活かす取り組みをどれだけの新聞社がやろうとしていたのでしょうか。こういう時だけ「販売店を守るため」と理由をつけていますが、本当に守ろうとしていたのかは疑問です。
宅配便事業という活路
紙の新聞を配達することに限界が来るとすれば、他の収入方法を提示する必要があります。例えば、デジタルの収入で、販売店にも恩恵があるような仕組みを作れればベターでしょう。
また、新聞以外のものを配達するというサービスも考えられます。私も先日、とある通販サイトで買い物したら、読売の販売店さんが配達しに来ました。ヤマト運輸や日本郵便の穴を埋めるように、配達の物流を担うというのも一つの手です。
きめ細やかな「見守りサービス」も考えられる
前々から思っているのが、地域のコミュニティに密着したサービスです。例えば、高齢者の家を巡回して、毎日投函する時に安否確認を行うとか、新聞が溜まっていたら「お元気ですか」と声を掛けるなど、地域コミュニティの福祉の部分で何らかのサポートをするのです。
月額4000円台の新聞購読料にプラス数百円、たとえば5000円で新聞配達と見守りサービスがセットで提供されるなら、見守りサービスをメインに、情報も手に入れられるのなら選ぼうとする人もいるでしょう。
見守る側の家族や子どもたちに、電子版の利用権をプラスすれば、それなりの収入になるのではないかと思います。
いまさら「販売店を維持」。どの口が言っているのか
販売網を維持しながら、新たなビジネスを展開することもできたはずです。
たとえば新聞の折り込みチラシがありますが、チラシ単体で配布するということもできでしょう。新聞の中に挟み込むのではなくても、折り込みチラシだけを配布する。ポスティング代行業者より、もっと地域を知る販売員だからこそ、より高品質なサービスを提供できるでしょう。
こう考えると、もっともっと販売店を維持するための対策が考えられたはずなのに、新聞社はほとんど何もしてこなかったのではないかと思っています。
そこでこういう時に限って「販売店を維持するため」と聞くと、「どの口が言っているのか」という思いを抱く今日この頃でございます。それではまた次回です。
(以上はコラムニスト・城戸譲が、ポッドキャスト「のらニュース」などで話した内容を、AI文字起こし・要約によってブログ記事化したものです。公開時点で最新情報ではない可能性があるため、その点はご了承ください)